さまざまな保存ツール・資材・道具
保存ツール
保存ツールは全て工房内で作成しています。資料を直接収納する保存容器のみならず、書庫内の保存環境を整えるためのツールも欠かせません。センター内の自主工房であるという利点を活かし、蔵書に合わせた保存容器の改良や、必要に応じて新しい保存ツールの開発なども行っています。
書見台と支持台
本の閲覧や展示、ページ修理の際には書見台を使います。閲覧者からの要望に応じ、少し傾斜がつくような支持台も制作しました。本を適切な角度で開いたまま保持することができ、本の背やノドにかかる負担を軽減します。本の大きさによって使い分けられるよう、中型・大型の書見台と支持台があります。使わない時は、コンパクトに収納することができます。
保存箱
劣化調査で採寸した本の大きさに合わせ、中性紙ボードで1点ずつ作成します。各本の重さや形態を考慮し、保存箱の仕様(留め具式/差し込み式)、紙の厚さを選びます。
封筒フォルダー
一枚物や薄い資料は、封筒フォルダーに入れて保存します。折り目をつけた中性紙ボードに、資料を入れやすいように加工した封筒を、両面テープで貼ります。フォルダーはマチ無しタイプとマチ有りタイプの2種類を作り、資料に合わせて使い分けています。
フォルダーボックス
封筒フォルダーや薄い資料は、中性紙で作成したフォルダーボックスに入れ、書棚に並べます。
ジャケット
表装の傷んだ本、保革油を塗った本などには厚手の中性紙でジャケットを作成しますが、保存容器に収納する場合は、薄手の中性紙で作ります。ジャケットをかけることによる表装材の保護や、傷んだ革装本の応急処置としても利用できます。
保存製本
閲覧時に破損する恐れがある本で必ずしもオリジナルの形態にこだわらない場合、中性紙ボードと製本用クロスを使って保存製本にします。本に対して接着剤を使わずに仕上げるこの製本方法は、本文と表紙を分離し、すぐに他の保存形態へ移行することが可能です。
ブック・スツール
綴じの劣化などにより、本文が落ちてしまった本に使います。それぞれの本の厚み・チリに合わせた台に本文をのせることにより、破損の進行を食い止めることができます。
すき間ボックス
資料配架の際には棚の右端を一冊分程度あけ、すき間にこのボックスを入れます。資料を詰め込みすぎると発生する、取り出し時の破損を防止するため考案しました。
保存用資材
中性紙
中性紙にはph. 7.0(中性)からph.8.5(弱アルカリ性)があり、用途に合わせて保存容器や保存製本の作成に使用します。また、滑り止め、調湿のため書架に敷いて使用しています。
和紙
和紙はさまざまな修理に使用します。印刷された文字が透けて見える薄いものから、構造修理に適した厚いものまで、楮を原料とした数種類を揃えています。
保革油
目止め用のセルロース(HPC)の溶剤にはエタノール、イソプロパノールなどを用います。ニーツ・フットオイルと精製ラノリンで作られた保革油と、仕上げにはアクリルポリマーを使用しています。
道具
工房では、修理方法や制作物に応じて、様々な道具を使用しています。画像は、それらの中でも特に使用頻度の高いものです。
大型断裁機、コーナーラウンダー、はさみ、筆、水筆、目打ち、ペーパーナイフ、骨ヘラ、ハケ、金定規、テフロンヘラ、スパチュラ、ピンセット、カッター、ディバイダー、製図用文鎮、顕微鏡、プレス機