ギールケ文庫

「団体法論」で名高いベルリン大学教授オットー・フォン・ギールケ(1841-1921年)の約1万冊の蔵書。本コレクションの中心は法学で、法学一般、民法、国法、労働法、刑法、商法、教会法、慣習法といった分野に分かれ、さらにそれぞれの分野で、歴史、一般、地方に細分化されている。中でも民法、国法は全体の50%を占めている。民法の中にはローマ法部門があり、そこにはヴァンゲロウの『パンデクテン法教科書』のような手書きの講義ノートもある。ギールケの主著『ドイツ団体法論』(1868-1913年)をはじめとする一連の著作も多くはこの民法の分野に分類されている。その他、L.ブレンターノ、J.コブラー、M.パッペンハイム、U.シュトゥッツ等の作品も多く、それぞれ50冊を越えている。なおギールケ文庫には法学の周辺領域として政治学、経済学、社会学等の文献も所蔵されている。

文献

ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

Die protestantische Ethik und der Geist des Kapitalismus
(Gierke/T:259)

ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

出版事項

Die protestantische Ethik und der “Geist" des Kapitalismus / von Max Weber
出版者 Tübingen : J.C.B. Mohr
出版年 [1905?]
形 態 2 v. ; 23 cm
注記事項 Caption title
“Separat-Abdruck aus dem Archiv für Sozialwissenschaft und Sozialpolitik. Neue Folge des Archivs für soziale Gesetzgebung und Statistik …, 20-21. Band 1. Heft"–Cover
著者標目 *Weber, Max, 1864-1920
本文言語 ドイツ語

解説文

M. ウェーバー(1864-1920年)といえば、20世紀を代表する社会科学者の一人であるが、分けても通称「プロ倫」と呼ばれるこの論文は、近代資本主義の成立をルターに始まるプロテスタント諸派の活動と結びつけて論じた点で、同時代人はもちろんのこと、後の時代の同種の研究に大きな影響を与えたのみならず、当人自身のその後の研究テーマの方向を決定づけた重要な論文である。

本書は社会科学古典資料センター所蔵のギールケ文庫に含まれる、当初発表された雑誌からの抜き刷りであり、ウェーバー自身がギールケに送ったと思われるもの。第1章の最初のページに著者の献辞が記されている。ギールケがベルリン大学法学部正教授に就任したのは1887年のことであるが、その頃ウェーバーは同大学などで法律学等を研究しており、1889年にはベルリン大学で博士号を取得、1893年には同大学の商法・ドイツ法の員外教授となった他、2人とも社会政策学会において有力な会員であったことなどから、両者の間に何らかの交流が存在したのではないかと想像される。実際、ギールケ文庫にはこの他にも著者より送られたと思われる抜き刷りがいくつか存在し、その感を強くさせる。

ヘーゲル『法の哲学』

Grundlinien der Philosophie des Rechts
(Gierke/A:33)

ヘーゲル『法の哲学』
ヘーゲル『法の哲学』

出版事項

Grundlinien der Philosophie des Rechts / von Georg Wilhelm Friedrich Hegel (Naturrecht und Staatswissenschaft im Grundrisse / zum Gebrauch für seine Vorlesungen von Georg Wilhelm Friedrich Hegel)
出版者 Berlin : In der Nicolaischen Buchhandlung
出版年 1821
形 態 xxvi, 355 p. ; 21 cm
著者標目 *Hegel, Georg Wilhelm Friedrich, 1770-1831
本文言語 ドイツ語

解説文

ヘーゲル(Hegel, Georg Wilhelm Friedlich, 1770-1831)はドイツ観念論を集大成した人物である。本書は、『精神現象学』(1807年)、『論理学』(1812-16年)と並びヘーゲルの代表的著作の一つであり、自由概念と国家の結合という近代国家論を論じたものである。個人が自己を放棄して普遍を支えるという普遍と個との疎外による媒介、社会的関係を固体化・実体化した観念的な幻想が社会的に妥当する結果、観念性が社会的現実性の構成要素になるという物象化論による媒介という、普遍問題に対する社会的アプローチは、マルクスの『資本論』に強い影響を与えた。主格、心身、自他の根源的媒介という発想は、時代を超えて、現代哲学の根本思想となっているし、反歴史主義の性格をもつデカルト主義に対しても、歴史哲学と哲学史を確立したことも、ヘーゲルの最大の功績に讃えられる。

グロティウス『戦争と平和の法』

Hugonis Grotii De iure belli ac pacis libri tres …
(Gierke/V:18)

グロティウス『戦争と平和の法』
グロティウス『戦争と平和の法』

出版事項

Hugonis Grotii De iure belli ac pacis libri tres, in quibus jus naturæ & gentium, item juris publici præcipua explicantur版 Editio nova, cum annotatis auctoris, ex postrema ejus ante obitum cura. Accesserunt annotata in Epistolam Pauli ad Philemonem et dissertatio De mari libero
出版者 Amstelædami : Apud Ioannem Blaev
出版年 1667
形 態 [6], xviii, 620, [110], 28, [2] p. ; 21 cm
他の書名 VT:De ivre belli ac pacis libri tres
VT:De jure belli ac pacis libri tres
注記事項 Last page blank
Includes bibliographical references and index
著者標目 Grotius, Hugo, 1583-1645
本文言語 ラテン語,ギリシャ語

解説文

フーゴ・グロティウス(Hugo Grotius, 1583-1645)は、オランダの法学者・政治学者であり、今日しばしば「近代自然法学の父」「国際法の父」と謳われている。多数の著作を公にしているが、国際法に興味を持つのは、オランダ東インド会社がポルトガル船を捕獲するという事件が起こり、会社の委託によりオランダ側の立場を擁護するため1604-05年に「海上捕獲法論」を執筆したことに始まる。1618年に宗教的・政治的争いのためにアルミニウス派の指導者として終身禁固刑を宣告され投獄されたが、妻の協力で脱獄に成功し、1621年にフランスのパリに亡命して、当時の国王ルイ13世の保護を受ける身になる。その時に書かれたのが本書『戦争と平和の法』である。それゆえ本書の初版の地がパリであり、ルイ13世に捧げるグロティウスの献辞が本書に付されている。