左右田文庫
我が国の経済哲学の創始者左右田喜一郎のコレクション。蔵書の中心は哲学思想関係である。分類は、A. 哲学-古代、中世、ノイエツァイト、B. 古典研究、C. 現代哲学-一般、哲学史、認識論、論理学、倫理学、美学、心理学、歴史哲学、法哲学、宗教哲学(哲学以外にも、D. 数学、E. 自然科学、F. 法学・国家学、G. 社会学、H. 社会主義、J. 国民経済学等の周辺諸学もある)のようになっている。カントの著作に関しては『実践理性批判』、『判断力批判』、『純粋理性批判』の初版、各版、をはじめとして、全集、著作集の各版がよく揃っている。カント研究の文献も約900冊あり、カント哲学や新カント派研究に必要不可欠の蔵書である。カント周辺のC. ヴォルフ、J. F. フリース、ライプニッツ等の著作もかなり充実している。
文献
- Katalog der Soda Kiichiro-Bibliothek in der Handels-Universitat Tokio
東京商科大学附属図書館 左右田文庫目録 Tokio : Bibliothek der Handels-Universitat Tokio, 1942 - 太田可夫「左右田文庫に就て」、『一橋新聞』第293号、1939年、その後『一橋大学附属図書館史』一橋大学、1975年に収録
- 渡植彦太郎「左右田文庫に因みて」、『一橋大学社会科学古典資料センター年報』第3号、1983年
- 太田可夫「左右田文庫の分類を終へて」、『一橋論叢』第8巻第2号、1941年
- 太田可夫「左右田文庫の内容」、『一橋論叢』第5巻第6号、1940年
- 福島知己「左右田文庫について少々」、『一橋大学社会科学古典資料センター年報』第34号、2014年
アダム・スミス『道徳感情論』
The theory of moral sentiments
(Soda/Ab:952)
出版事項
The theory of moral sentiments / by Adam Smith
出版者 London : Printed for A. Millar, in the Strand; and A. Kincaid and J. Bell, in Edinburgh
出版年 1759
形 態 [12], 551, [1] p. : 21 cm
注記事項 Errata: p. [1] at end
著者標目 *Smith, Adam, 1723-1790
本文言語 英語
解説文
1759年に出版されたアダム・スミス(Smith, Adam, 1723-90)のデビュー作である本書は、道徳哲学講義の倫理学の主題を展開したものである。同感の概念規定から始まるこの書物は、利害関係のない観察者が立場を交換して当事者のおかれた事情を考察するとき同感する点に、行為や感情の適宜性の原理を求めるものであった。スミスの倫理学は、見知らぬ人々の冷静な目を、人と人との間のコミュニケーションの原理とすることによって、本能的な衝動の社会化を意図していたのであるが、この著作は厳密な意味での倫理学と言うより、道徳感覚と相互仁愛原理に立脚する F. ハチスンの道徳哲学、その中核をなす自然法学体系に代わる、より経験的な自然法学構築のための方法序説として展開されたものであった。彼が、人と人との関係における正義の徳の基礎付けをこの書物の初版の前半部の中心主題とし、倫理と法の差異を明確化するとともに、自然の原理に反する慣行と効用主義の批判を後半部の主題としていた理由はそこにある。スミスは手放しの自由放任主義でなくフェアな自由競争を主張した。
カント『人倫の形而上学』
Die Metaphysik der Sitten
(Soda/Ab:564)
出版事項
Die Metaphysik der Sitten in zwey Theilen / abgefasst von Immanuel Kant
出版者 Königsberg : Bey Friedrich Nicolovius
出版年 1797
形 態 1v. (various pagings) ; 21 cm
注記事項 Description based on: Metaphysische Anfangsgrunde der Tugendlehre
Contents: Metaphysische Anfangsgründe der Tugendlehre / von Immanuel Kant. 1797 — Metaphysische Anfangsgründe der Rechtslehre / von Immanuel Kant. 1797
著者標目 *Kant, Immanuel, 1724-1804
本文言語 ドイツ語
解説文
イマニュエル・カント(Kant, Immanuel, 1724-1804)は西欧近世の代表的哲学者である。同書は、カントの歳晩年に属する実践哲学の体系書である。本書は第一部「法論の形而上学的原理」、第二部「徳論の形而上学的原理」からなる。第一部は私法と公法からなる法哲学である。そこでは、所有、国家、外的強制、永遠平和、国際連盟等々の哲学的基礎付けが試みられ、カントのなかで最もまとまった形での法・政治哲学を提供している。第二部は教義で「倫理学」と呼ばれるが、これは内容からして実質的に倫理学の体系とみなすことができる。自己保存、自己陶冶、他人の幸福の促進といった具体的な徳義務が体系的に展開されている。このように『人倫の形而上学』は法哲学と実質的倫理学とからなる実践哲学体系として構成されている。
カント『永遠の平和のために』
Zum ewigen Frieden : ein philosophischer Entwurf
(Soda/Ab:591)
出版事項
Zum ewigen Frieden : ein philosophischer Entwurf / von Immanuel Kant
出版者 Königsberg : Bey Friedrich Nicolovius
出版年 1795
形 態 [2], 104 p. ; 18 cm
著者標目 *Kant, Immanuel, 1724-1804
本文言語 ドイツ語
解説文
本書は、国際間に永久平和を確立するためには、多数の国家に主権を放棄させることは不可能であるから、協定による諸国家の連盟機構(第二次大戦後における「国際連合」のような構想)の必要性を提唱した、カントの代表的著作の一つである。カントの道徳哲学は「人格主義(人間がそれを目的として追求しなければならない最高の道徳目標は人格である)」である。しかし道徳の目標が自由な人格の達成にあるとしても、もし各自が勝手にふるえば、社会は混乱に陥り道徳目標の達成は不可能となるだろう。国家以上の権力組織が存在しない現状では、国際的な紛争や戦争が起こり、人間本来の目標である人格の完成という道徳行為はきわめて困難となる。人間が人間にふさわしい生活を保障されるには国際間の平和が要請されるが、そのためには諸国家の連盟機構が必要である。本書は、平和思想を具体的に検討する場合はいつも引用されるほど重要な文献となっている。
ニュートン『プリンキピア』
Philosophiae naturalis principia mathematica
(Soda/Ab:779)
出版事項
Philosophiae naturalis principia mathematica / Is. Newton
出版者 Londini : Jussu Societatis Regiae ac Typis Josephi Streater …
出版年 1687
形 態 383, 400-510 p. ; 25 cm
注記事項 “Imprimatur, S. Pepys, Reg. Soc. Praeses. Julii 5. 1686."
著者標目 *Newton, Isaac, Sir, 1642-1727
本文言語 ラテン語
解説文
『光学』と並ぶニュートンの主著であり、科学史上もっとも重要な著作の一つ。1684年の王立協会の会合で逆二乗則から天体運動を導く問題が提出されたことがきっかけで執筆され、エドマンド・ハリーの私費で出版された。初版は400部ほど印刷されたと推定されている。この初版にはタイトルページの出版事項の相違から国内販売用とSamuel Smithという販売者名の入った輸出用の2種類の異版があることが知られているが、センター所蔵版は国内販売用の一つである。ただし、この国内販売用の版にもいくつかのヴァリアントが存在する。なお、センター所蔵版には彗星の軌道を描いた折り込み図版が欠けており、正誤表も含まれていない。